
ひとり起業家のためのガイド|サービスを作るまでの流れ
はじめに:ひとりで起業できる時代になった
こんにちは、オンビルドの前田です。 インターネット、IT技術、そしてAIの進化により、かつては資金や人脈、特別なスキルが必要とされていた「起業」が、今では驚くほど簡単になりました。
特にWebアプリやスマホアプリといったインターネットサービスを作る費用がとても低くなりました。 従来の起業といえば、オフィスを構え、高価な器具を揃える必要があったため、借金をしなければなりませんでした。 例えば飲食店を開業する場合は、賃貸料金、調理器具、改装費など大量の資金が必要です。
しかし、インターネットサービスであれば月々のコストは1万円もいかないくらいから始めることができます。 そして実際にサービスを作るのも、1~2ヶ月あればそれなりのクオリティのものができてしまいます。
このような時代において、起業という選択肢は一部の限られた人だけのものではありません。エンジニアやデザイナーはもちろん、ごく普通の人でも、気軽にスタートできます。
とはいえ、「簡単に始められる」一方で、初めての場合はどこから始めればいいのか分からないという最初の壁があります。本記事では、どうやってひとり起業初心者ができるだけ失敗せずにインターネットサービス起業をできるか具体的なステップを、紹介します。
ひとり起業のステップ1:良いアイデアを出す
まずステップ1は、アイデアを出すことです。この段階が最も重要で、ここでの選択がのちの成功の可能性を大きく左右します。 アイデアには2種類あって、良いアイデアと悪いアイデアがあります。色んな人とお話する中でこれは良いアイデアだな、悪いアイデアだなというのはすぐにわかります。
アイデアを思いついた段階で、それは良いアイデアなのか、悪いアイデアなのかを吟味する習慣をつけましょう。
良いアイデアの条件とは?
ここで、良いアイデアの条件をまとめした。
- 強いニーズがあるか(誰かの「痛み」を解決しているか)
これがアイデアの良し悪しを決める最も重要なことです。 ニーズがなければお金は生まれません。もしあなたの目的がお金ではなく趣味であればニーズがなくても構いません。 例えば「散歩中の犬のうんちを取る道具」を思いついたとします。(マジックハンドみたいな感じです。)これは良いアイデアと言えるでしょうか。おそらく殆どの飼い主はその道具を買わないと思います。なぜならビニール袋で十分だからです。
「あったら便利かもしれない」は悪いアイデアと言えます。 ニーズがあるかどうかの例として痛み止めとビタミン剤の例え話がよく使われます。 痛み止めはなくてはならないもの、お金を出してでも早急に手に入れたいものです。対してビタミン剤はあったらいいな、くらいのもので、お金を出して買うほどニーズは強いとはいえません。 アイデアを思いついたら、「それはなんの痛みを解決するのか。 自分のアイデアは痛み止めになのか、それともビタミン剤なのか」をまず考えましょう。
- あなたは、ターゲット市場に対して専門性を持っているか
もしあなたがなにか仕事をしていれば、その業界の構造というのもよく知っていると思います。 逆に全くの未経験の分野だと、そもそも現場がどのような仕事をしているのか、現場で起こる問題は何なのか、仮にサービスを作ったとしてもそれをどう導入するのか、などわからないことだらけだと思います。 つまり、業界知識があればあるほど、ユーザーの課題が見えやすく、良いアイデアが生まれやすいです。 また、業界に対してコネクションがあると、マーケティングもしやすくなります。
ですので、起業するときは、自分の専門領域にするべきだと思います。もし未経験の分野で起業したい場合は、対象の業界に対しての専門性やコネクションがある仲間がいることが大事です。
例えば、もしあなたが看護師ならば、看護師が抱える問題を解決するアプリを作るようにしたほうが成功確率は上がる、ということです。 私が初めて起業したときは、医療関係のアプリでした。私自身エンジニアで医療関係者ではないにも関わらず、です。 もちろん現場の問題も知らなければ、どのように導入するのかなども未定のままサービスを作ってしまいました。もちろん誰にも使われずに終了しました。
皆さんも私と同じ失敗をしてほしくはありません。ですので、自分が詳しい領域のアイデアを考えるようにしましょう。
- ニッチであるか
ひとりで起業する場合はニッチなアイデアを考えましょう。例えば、新しい汎用的なノートアプリを思いついたとしてもそれでNotionを上回れるかと言われるとほぼ無理だと思います。Notionから乗り換えるには強い理由が必要です。しかしなにかに特化したニッチなノートアプリであれば、大手に勝てる可能性があります。
例えばマッチングアプリなら、「シニア専用」、「既婚者専用」「シングルマザー・ファザー専用」というように対象のユーザーを狭めてよりニッチにしたほうが、良いアイデアと言えます。
合言葉は「ソロプレナーはニッチを攻めろ」 です。
- 自分が情熱を持って取り組めるか
起業をすることは簡単ですが、成功することは簡単ではありません。成功するためには継続が必要になってきます。そして、継続するためにはモチベーションが必要になります。 もしあなたの起業のモチベーションがお金であれば、結果が出ないうちは苦しい思いをするでしょう。逆にお金が入らなくても続けられるほど高い情熱を持っていれば、無理なく継続することができます。
良いアイデアといえるのは、あなたが情熱をもって取り組める、好きなこと・やりたいことです。 あなたのアイデアは楽しそうなことでしょうか。面白そうでしょうか、ぜひやりたくてワクワクしているでしょうか。この質問にYesと答えられないのであれば、それは悪いアイデアかもしれません。
アイデアを考えるときの視点
上記の良いアイデアの条件にプラスして、ビジネスモデルについても知っておいてほしいことがあります。
- あなたのアイデアはBtoB or BtoC?
BtoBというのはBusiness to Businessの略で、仕事をしている人たち(法人なども含む)を相手にビジネスをすることです。 BtoCというのはBusiness to Consumerの略で、一般消費者の人たちを相手にビジネスをすることです。
例えば、飲食店は個人を相手にしているため、BtoCです。飲食店に食材を売っている卸売り業者はBtoBです。
個人的には、起業する際はBtoBビジネスがおすすめです。 なぜなら、人は仕事に対しては躊躇なくお金を払うからです。 例えばYoutuberの方は、カメラや編集ソフトなどに多額のお金を払うと思います。 なぜならそれは収益を上げるための投資だからです。 そして、仕事の場合は、投資したものは経費として扱われます。つまりお金を払うハードルが一般消費者に比べて格段に低いのです。 またBtoBは法人(会社)を相手にします。 一般消費者よりもお金を持っているため、単価が高く利益が出やすいことが特徴です。
もしアイデアを思いついたら、BtoCなのか、BtoBなのかを明確にしましょう。
具体的なアイデア発想法
では具体的にどのようにしてアイデアをだすべきでしょうか。アイデア出しのコツは、自分、もしくは近しい人の困りごとを考えることです。 過去を思い出して、「そういえばあの時こういう悩みあったな」、とか「結構今不便だな」と思ってたことをたくさんあげてみましょう。
また、自分だけじゃなくて、近しい人、例えば家族や職場の同僚でも構いません。 だれかの悩みを解決することが良いアイデアの絶対条件です。
または、今は生成AIが発達しているのでAIを使ってみると面白いアイデアが出てくる可能性もあります。 オンビルドのAIツールを使うことでニッチで良いアイデアをたくさん生成することができます。
ひとり起業のステップ2:市場調査(マーケットリサーチ)
良いアイデアが見つかったら、「そのアイデアに市場があるか」を確認しましょう。
なぜ市場調査が必要なのか?
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誰もお金を払わないアイデアは「趣味」で終わる
ビジネスとして成り立たせるには、お金を払ってもらえないといけません。そのためにアイデアを思いついたときに「市場があるか。」「収益が挙げられそうか」などの基本的なマーケティングを調べる必要があります。 -
類似サービスがある場合は、差別化ポイントを明確にする必要がある
もしすでに似たようなサービスがある場合は、そのサービスを置き換えてでもあなたのサービスを使う理由が必要です。いわゆる「差別化」です。 競合を調べることで、あなたのサービスはなにが優れているのかを明確にすることができます。 また、サービスを作ってから実はすでに競合がたくさんいて埋もれてしまった、という失敗も防ぐことができます。
市場調査のやり方(初級編)
市場調査は、それだけで本が1冊かけてしまうくらい奥が深いものですが、初心者でもできる市場調査の方法を2つ紹介します。
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ユーザーインタビュー
ユーザーに直接聞くのは最も強力な市場調査と言われています。 可能であれば、対象の人にサービスをお金を払うか聞いてみましょう。いわゆる「ユーザーインタビュー」です。 ただし、自分が必要だと思ったアイデアの場合は注意が必要です。良さそうなアイデアを思いついたら、興奮して自分を客観的に見れない可能性があるからです。 近しい人がいれば、その人に「〇〇を作ったらお金を払う?」と聞いてみましょう。
また、相手が近しいひとであればあるほど、耳障りが良いことを言ってもらえるため注意が必要です。あくまで客観的な意見をいってもらうように頼むことが必要です。 もし、反応がいまいちであればそのアイデアはボツにしたほうが良いでしょう。 -
競合が存在しているか調べる
アイデアを思いついたら、Googleで類似サービスを検索してみましょう。 例えば、「既婚者専用マッチングアプリ」を思いついたら、「既婚者 マッチングアプリ」というキーワードです。 これだけでも、すでにそのようなサービスがあるかどうかを調べることができます。
競合調査このときのコツは、いろいろなキーワードで調べることと、 Googleだけではなく様々な媒体(SNSや掲示板、レビューサイトなど)で徹底的に調べてみることです。 私個人のおすすめは海外向けのサービスであれば、「Reddit」です。 Redditは、ユーザーが自分のアイデアを投稿したり、他のユーザーのアイデアを見ることができるサイトで、日々色々なサービスが紹介されています。
ここまで調べると、殆どの場合は競合がいると思います。 逆に徹底的に調べても競合が見つからない場合は、
- まだ誰も気がついていない穴場のアイデア
- 競合のマーケティングが乏しいため、勝てるチャンスがある
- 需要がそもそもない
のいずれかということになります。 需要がないかどうかは、更に詳しく調べてみる必要があります。やはりユーザーインタビューをすることが最も確実でしょう。
また、競合がすでに板としても諦める必要はありません。自分のサービスが出せる独自の強みがあれば、競合と戦うことはできるからです。競合を知ることは自分のアイデアを知ることでもあるのです。
ひとり起業のステップ3:プロトタイプを作ってみる
市場に可能性があると判断できたら、実際にサービスを作ってみましょう。 先に述べたとおり、インターネットサービスを作るハードルは一昔前に比べたら格段に低くなっています。 実際に作る手段としては、以下のものがあります。自分が作りたいサービスの種類や予算を考慮して決めるべきでしょう。
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ノーコードツールを使う(Bubble, Glide, Softrなど)
今の時代はコードを書かなくても、アプリを作成することができます。いわゆるノーコードツールと呼ばれるものですが、どんどん進化してきており、コードを書くよりも簡単にアプリを作ることができます。 もしコーディングの全くの初心者であれば、これが最もおすすめです。 -
AI開発支援ツール(Cursor, GitHub Copilotなど)を使ってコーディングをして自作
あなたがエンジニアであればハードルは低いはずです。コーディングの初心者でも不可能ではありません。カスタマイズ性を考慮すると、できればノーコードよりも実際にコーディングするほうが長期的にはおすすめです。 -
アウトソーシングで依頼する
アプリの種類や規模にもよりますが、大体、相場としては1ヶ月100万円~ほどです。 予算に余裕がある場合や、実際に事業をどんどん進めたい人は、アウトソーシングで依頼するのも一つの手です。
ひとり起業のステップ4:継続する
サービスを公開しても、簡単には結果が出ません。 反応がないと落ち込むかもしれませんが、ここで継続できるかが成功と失敗の分かれ目です。 特に、マーケティングがしっかりしていないと、本当にだれにも使われません。 ですので、マーケティングは開発をしつつ同時並行で行う必要があります。 私たちのサービスであるオンビルドはそのためにあります。
開発とマーケティングを継続して行い、以下のことを意識しましょう。
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ユーザーがゼロでも焦らない。マーケティングをしてユーザーを獲得していく
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ユーザーの声を取り入れながら、徐々にサービスを改善していく
まとめ
かつての起業は「会社を辞めて、多額の資金を借りて、背水の陣で挑戦する」ものでした。 しかし今は違います。副業でも、自宅でも、ノーリスクで始められます。
ただし、「簡単に始められる=簡単に成功する」ではありません。
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良いアイデアを考える
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市場調査をしてニーズを把握する
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小さく作って、すぐ改善
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継続して育てる
このサイクルを回し続けることで、あなたのサービスは少しずつ「使われるサービス」になっていきます。