
ソロプレナー、個人開発者必見!プロダクト開発で失敗しないために考えるべき5つのこと
はじめに:いきなり開発は危険信号!売れるSaaSを作るための「事前準備」
「素晴らしいWebアプリのビジネスアイデアが閃いた!よし、すぐに開発に取り掛かろう!」
もしあなたがソロプレナーや個人開発者として、そう考えているなら、少し立ち止まってください。多くのSaaS起業家やWebサービス開発者が陥りがちなのが、「作る」ことに集中しすぎて、その前の「考える」フェーズを疎かにしてしまうことです。
マーケティングが苦手なエンジニアほど、この罠にはまりがちです。しかし、限られたリソースのソロプレナーにとって、プロダクト開発前の事前準備は、失敗しないための最も重要な戦略となります。
この記事では、あなたのWebアプリが市場で成功するために、プロダクトを作る前に必ず考えるべき5つのことについて、ニーズ検証や市場調査の視点も交えながら、ステップバイステップで解説します。
なぜ「作る前」の思考が重要なのか?ソロプレナーが避けるべき落とし穴
プロダクト開発前の思考を怠ると、「誰にも使われないプロダクト」を作ってしまうリスクに直面します。せっかく何ヶ月もかけて作ったのに誰にも使われない、こんなに悲しいことはありません。
このような失敗はソロプレナー、個人開発者にとっては誰もが経験することです。このような失敗は、マーケティングの理解を深めることで事前に回避することが可能です。失敗を100%回避することはできませんが、確率を下げることは可能です。
以下、プロダクトを作成する前にチェックすべきことを5つのステップにわけてご紹介します。
プロダクトを作る前に考えるべき5つのこと
1. 誰の、どんな「痛み(課題)」を解決するのか?
あなたのWebアプリは、誰の、どんな具体的な課題を解決する「痛み止め」になるでしょうか?漠然とした「便利ツール」ではなく、特定の**ターゲットユーザー(ペルソナ)**が抱える「強い痛み」に焦点を当てることが重要です。
スタートアップ界隈でよく使われる比喩として、「ビタミン剤」と「痛み止め」というものがあります。
- ビタミン剤:健康を維持するためのもの。正直、なくても困りません。
- 痛み止め:無いと困ります。片頭痛がある人にビタミン剤を飲ませても、痛みは治りません。痛み止めはユーザーがお金を出しても欲しいものです。
あなたの作るプロダクトは、痛み止めですか?ビタミン剤ですか?成功するためには、痛み止めを作ることをおすすめします。
ポイント: その「痛み」は、どれくらいの頻度で、どれくらいの強度で発生していますか?ユーザーは、その痛みを解決するためにお金を払う価値があると感じるでしょうか?痛みの基準はお金を払ってもいいか。無料ツールで十分であれば、それは痛みではなくかゆみです。
ペルソナの作成
ペルソナは、あなたのWebアプリを使うユーザーの典型的なユーザー像です。ペルソナを作成することで、あなたのWebアプリがどのような人にとっての痛み止めになるのかを明確にします。 ペルソナを作成することで、あなたのサービスがどのような人にとっての痛み止めになるのかを明確にします。 無料で作成できるツールはこちら
痛み止めアイデアの特徴
- 退屈に聞こえる
- ユーザーがプロダクトが解決を目指す問題を解決しない場合、重大な負の影響を受ける(例: 金銭的損失、法的トラブル、時間の無駄)
- 主にB2B(ただしB2Cも可能)
- ユーザーは週に1回/毎日使用する
- このプロダクトを親に説明するのは難しい
ビタミンアイデアの特徴
- 過剰な宣伝に聞こえる
- ユーザーは軽微なネガティブな影響を受ける(例: Twitterでのいいねが減る、新しい習慣が身につかないなど)
- 主にB2C
- ユーザーは年間/月間単位で利用する
- 親にこのプロダクトについて話すのは恥ずかしい
チェックリスト:
- ターゲットは明確ですか?ペルソナを作ってみましょう。無料でペルソナを作れるツールはこちら
- そのペルソナは、どんな「痛み」を抱えていますか?
- ビタミン剤ではなく、痛み止めですか?
- その痛みを解決するために、ユーザーはお金を払うでしょうか?
2. ニーズ検証と競合調査は済んでいるか?
あなたのビジネスアイデアが、本当に市場のニーズと合致しているかを確認します。この段階では自分の思い込みがどうしても入ってきてしまいますが、ぐっとこらえて客観的にニーズを検証しましょう。
ユーザーインタビュー
もっとも確実な方法は、ターゲットユーザーに直接話を聞くことです。その時に、「実際にお金を払いますか?」という質問をしてみましょう。個人的な人脈を活用することも一つの方法です。ただし、なかなかユーザーに会うことは難しいかもしれません。そういった場合、MENTAやビザスクといったインタビューできるサービスを使うことも一つの方法です。
競合調査
競合を調べてみましょう。新しいアイデアを閃いても、競合がいるかもしれないというのは恐怖があり、誰でも目を背けたくなります。しかし、どんなに優れたアイデアでも殆どの場合すでに競合がいます。事前に競合を調べておき、もし参入の壁が高いことを知れば無駄な時間を過ごすことを防ぐことができます。
もし、競合のサービスがある場合、なぜユーザーはそれに満足していないのでしょうか。その理由をしっかり考える必要があります。特にBtoBの場合、「既存のツールから乗り換える」ということになります。乗り換えるコストは高いため、それを上回るメリットがないといけません。大きなコストをはらって乗り換えるのであれば、それを上回るメリットがないといけません。
バリュープロポジションを作る
ユーザーのニーズと競合と自分のサービスを可視化した、バリュープロポジションを作成してみましょう。ユーザーは現在、その「痛み」をどう解決していますか?(手作業、別のSaaSツール、競合のWebサービスなど)そして、既存の課題を解決する方法・機能に対する「不満点」こそが、あなたのWebアプリが入り込むチャンスです。
競合が真似できない自分の強みを可視化した、バリュープロポジションを作成してみましょう。

チェックリスト:
- ユーザーインタビュー: ターゲット候補に直接話を聞いてみましたか?それとも仮説だけで進めていませんか?
- 競合調査を行いましたか?GoogleやProduct Huntなどで類似サービスを調べてみましょう。
- ユーザーが既に使っている他のツールや代替手段にどんな不満を持っているか把握していますか?
- バリュープロポジションを図解しましたか?(ユーザーの課題/自社の強み/競合の位置付け)
3. ビジネスとして成り立つか?
どんなに素晴らしいアイデアでも、市場が小さすぎれば大きなビジネスにはなりません。逆に、市場が大きすぎる場合は、ニッチを見つけて戦う必要があります。 ソロプレナーにおすすめな戦略は、ニッチ戦略です。大企業と同じ土俵で勝負しても、その市場では勝てません。大企業が参入してこなさそうなニッチな市場で、自分の強みを生かして勝つのがソロプレナーの戦略です。
市場規模を把握することは、収益予測にも繋がります。以下のような観点で市場を分析しましょう。
TAM, SAM, SOMの3段階分析
- TAM(Total Addressable Market):理論上の最大市場規模 例:「会計ソフト市場は全体で1兆円」
- SAM(Serviceable Available Market):自分のサービスが対象とする市場規模 例:「クラウド型会計ソフトに絞ると3000億円」
- SOM(Serviceable Obtainable Market):実際に狙える市場シェア 例:「個人事業主向けのニッチ市場に限ると50億円。その中で1%取れたら年商5000万円」
また、BtoBなのかBtoCなのかをここではっきりと理解しておくことが重要です。 BtoBとは、企業向けのビジネスモデルです。BtoCとは、個人向けのビジネスモデルです。
ソロプレナーの場合BtoCはかなり難しいです。なぜならBtoCはユーザー単価が低いかつ、利益を生むためには大量の集客が必要です。大量の集客するためには多くの資本が必要になります。その場合は、資本を集めるためにベンチャーキャピタルなどを利用する必要があります。
ソロプレナーの場合は、B2Bがおすすめです。B2Bはユーザー単価が高く、集客コストが低いです。B2Bといっても、大企業向けのものを作る必要はありません。仕事で使うツールであれば、中小企業や個人事業主のツールでも十分です。
また、あなたがどれくらいの利益を望んでいるかも考えてみましょう。例えば月10万円の利益を望んでいるなら、難易度はそれほど高くありませんが、月1000万円の利益を望んでいるなら、難易度はかなり高くなります。自分の意向と市場規模を考え、現実的かどうかを判断しましょう。
チェックリスト:
- BtoB, BtoCの選定: ビジネスモデルを選定します。ソロプレナーはBtoBがおすすめ!
- どれくらいの収益を望んでいますか?
- その収益を得ることはそのアイデアで可能でしょうか?
- TAM/SAM/SOMを数値で出しましたか?
- 実現可能な市場シェアを想定した収益予測を立てましたか?
- その市場において、自分のポジショニングは明確ですか?
4. マーケティング戦略は明確か?
作る前からマーケティングを考えるのは重要です。プロダクトが完成したあとから「さて、どうやって売ろうか…」では遅いのです。
自分の強みに合ったチャネルを選ぶ
あなたはSNSが得意ですか?SEO記事を書くのが得意ですか?それとも広告運用でしょうか?もしくは人脈や営業トークでしょうか?
全てをやるのは不可能です。あなたが自然に継続できるチャネルを選びましょう。
代表的なチャネルには以下があります:
- SEO(検索エンジン対策)
- SNS(Twitter / Threads / LinkedInなど)
- コミュニティ投稿(Reddit / Discord / Slackなど)
- 広告(Google広告 / Facebook広告など)
- 直接営業・アウトバウンドメール
- リファラル(紹介)プログラム
事前にフォロワーを集める
開発前からSNSやブログで「開発中のアイデア」「進捗」をシェアすることで、初期のフォロワー(ファン)を集めることができます。いわば「リリース前のリスト作り」です。
「プロダクトを作ること」と「それを必要とする人に届けること」は、完全に別スキルです。届ける準備はできていますか?
チェックリスト:
- 自分の得意なマーケティングチャネルは何ですか?
- そのチャネルで集客した場合、どれくらいのトラフィックが得られると見込んでいますか?
- 開発中にマーケティングを開始していますか?(SNS・ブログ・YouTube・コミュニティなど)
- ランディングページを作って、メールアドレスの事前登録を集めていますか?
5. 開発と同時にマーケティングを実践しよう
開発に時間がかかるように、マーケティングチャネルの育成にも時間がかかります。また、自分のプロダクトにどのマーケティングチャネルがよいのかは実際に実験をしてみないとわかりません。 複数のマーケティングプランを実行するようにしましょう。 そして実際のマーケットからのフィードバックを元に改善していきましょう。
チェックリスト:
- 開発と同時にマーケティングを実践していますか?
- 複数のマーケティングプランを実行していますか?
おわりに:成功確率を上げる最大の武器は「作る前の準備」
プロダクトを作るのは楽しいし、開発に集中するのはソロプレナーの醍醐味でもあります。しかし、ビジネスとして成果を出したいなら、「開発前の準備」にこそ力を入れるべきです。
今回紹介した5つの観点:
- 誰の、どんな「痛み(課題)」を解決するのか?
- ニーズ検証と競合調査は済んでいるか?
- ビジネスとして成り立つか?
- マーケティング戦略は明確か?
- 開発と同時にマーケティングを実践しよう
これらをクリアにすることで、あなたのアイデアはより現実的になり、成功確率をぐっと高めることができます。
「作ること」より「売ること」を先に考える。これが、マーケティングが苦手なソロプレナー、個人開発者にこそ意識してほしい、プロダクト開発の新しい常識です。